もっと早く出会いたかった。でもまだ遅くない『幸福の「資本」論』レビュー
こんにちは。
時に会社員、時にフリーランスのオンライン秘書、時にWeb広告評価者、そして時に投資家の複業家・A(エー)です!
昨日のブログでちらっと話に出した、橘玲さんの『幸福の「資本」論』。
週末にちょうど読了したので、備忘録としてレビューを残しておきたいと思います。
読み終わった後の感想は
「20代のうちにこの本に出会いたかった・・・」
この一言につきます。
我々の今後の生き方について、問いかけ、導いてくれるような本です。
タイトルだけ見ると「資本論なんでマルクスみたいで小難しそう…」と思われるかもしれませんが、これは「“幸福”の資本論」ですから。
あくまでも、我々日本人がこれからどう生き、どう資本を持てばより幸福を感じられるか、というところにフォーカスをおかれた本です。
そういったことが沢山の実話などをまじえながら書かれているので、とても身近に感じられ、読みやすいです。
内容は4部構成で、
0.「お金持ち」と「貧乏人」の三位一体幸福論
1.自由のための金融資産
2.自己実現のための人的資本
3.幸福のための社会資本
がそれぞれの章のテーマになっています。
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■0章
0章では、幸福を3つのインフラで条件づけています。
すなわち、先日のブログでも話に出した
・金融資産
・人的資本
・社会的資本
です。
ここで筆者はこの本の軸となる、幸福は上記3つのインフラで成り立っているという考えを提唱しています。
この章で興味深かったのが、地方に存在するマイルドヤンキーについていての考察です。
彼らは金融資産的には「貧しい状態」ではあるのですが、決して「貧困」ではないそうです。
彼らは今の状態に満足しているからです。
彼らは毎日のように仲間と集い、ガソリン代を割り勘し出かけたりしながら楽しんでいます。
そんな日々を続けることに疑問は覚えません。
自分の周りにいる仲間も皆同じような価値観で、貧富の格差もほとんどないから、不満も出てこないのです。
彼らは「社会資本」に資本が大きく偏っているので、何かの拍子に輪から外れてしまうと、途端に大きな資本を失ってしまうことになります。
そういう意味でやはり、幸せのインフラが一つに偏重してしまうのもリスクが高いなと感じました。
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■1章
1章では、自由を得るためには「経済的独立」がかかせないということが書かれています。
私たちの多くは、生きるためにどこかしらの組織に属して働くことで賃金を得ています。
たとえばその組織が急に、自身のポリシーやモラルと相反する方向に舵を切った場合、簡単に組織を去ることが出来る人はそう多くはないでしょう。
そのような状態を筆者は、組織に依存せざるを得ない「隷属」と言い、「批判ではないが、自由とは言えない」と語ります。
私はこの個所を読むまで、自分は経済的に自立した人間だと思っていました。
たしかに自分で家賃を払い、誰に経済的に頼るわけでもなく日々の活動を行っています。
しかしそれはあくまでも「自立」であって、「独立」ではないと気づきました。
大きな収入の柱である「会社」をいきなり辞めることは収入の上で不安があるからです。
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■2章
2章では、自己実現を、「仕事をとおし、かけがえのない自分になること」とし、そのための生き方について述べられています。
ゼネラリスト育成型の日本企業の体質では、真のスペシャリストなど育つわけもなく、ほとんどのサラリーマンが年齢とともにいずれキャリアに行き詰ります。
また、筆者は中高年の転職が難しい労働慣行により、日本の会社が典型的な閉鎖空間になっていることを問題だと指摘します。
会社を辞めても転職先がないかもしれないというリスクが高いため、できるだけ目立たず、悪評を避け、会社に監禁されることを自ら求めるようになるのです。
キャリアの先が見えてくる40代前後に、何一つスペシャルなものをもたず、ただのサラリーマンとして残り20年もしくはそれ以上を閉鎖空間に属し、そのような人生に疑問を抱いた時にはもう空間から抜け出せない・・・というようなシナリオはなかなか悲惨です。
そこで筆者は、人生の選択肢がまだ十分にあるうち(35歳をすぎると選択肢が急激に減ると書かれています)に自分の人的資本をつくり、人生設計をしっかり行うことをすすめています。
「でも自分の人的資本って言ってもどうしたら作れるの?」と思われるかもしれません。
私も同じことを感じました。
その答えは、その先にしっかり記載されていました。
答えは簡単で、
「自分の好きなことをとことん突き詰め、それをマネタイズできる方法・場所を見つける(=フリーエージェント化する)」
ということでした。
簡単だけど、それが一番難しかったりするんですけどね・・・( ;∀;)
印象深かったのが、とある音楽学校で、バイオリン選考の学生を
スーパースター(S)→スター(A)→プロ(B)
の3ランクにわけて、それぞれの練習時間を記録した研究を参照しての文。
練習時間の多さには圧倒的な差があったそうです。
もちろんSが最も練習時間が多かったのですが、その中でも個人での練習が多かったのもSランクの学生でした。
これについて筆者はつまり、「個人練習が能力工場に効率的なのではなく、能力の高い人間が個人練習を好む」のだととらえています。
人より何時間も多く一人で練習できるのは、それだけ好きだからということであり、人は自分が得意なことを好きになるそうなのです。
そこから考えると、
好きなこと=得意なこと
得意なこと=自分に向いていること
であるはずなので、その好きなことをとことん極めれば、自分に向いていることがさらに磨かれるので結果最強の武器になる、ということなんですよね。
難しいのはその先の、その「好き」をどうマネタイズしていくか、というところなのですが、それについてのアドバイスも本書には書かれています。
まずは「好き」を見極め、突き進むことが、自分だけのスペシャルを見つけるために必要であることがわかりました。
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■3章
最後の章は、人とのつながりである「社会資本」について記述されています。
まず筆者は、
「幸福」は社会資本からしか生まれない
と断言しています。
ヒトの進化の過程でそのようにプログラミングされてきたそうなのです。
社会資本とはすなわち人間関係のことで、その人間関係を本書の中では
・愛情空間(家族や恋人との関係)
・友情空間(親しい友人や先輩後輩、上司部下)
・貨幣空間(貨幣でつながる関係)
に大別しています。
そのうち、大体の価値の割合としては、愛情空間が人生の80%を占め、続いて友情空間が19%、貨幣空間はわずか1%程度の比重しかないそうです。
ここでも上述のフリーエージェントの話が出てきますが、フリーエージェントとして経済的に独立すると、組織に従属する必要がなくなり、人間関係を自らの意思で選択することができます。
嫌な上司や取引先、同僚から仲間外れにされることなどに怯える心配がなくなるのです。
とはいえ、人間関係をすべて断ち切り愛情も友情も失ってしまっては、生きている意味や味わいもなくなってしまいます。
そこで本書は、社会資本を、
1.強いつながりを愛情空間だけに絞り極力ミニマル化する
2.交友関係など、愛情空間以外の関係はすべて貨幣空間に置き換える
ことで最適化することを提案しています。
そうすることで、人間関係から生じるストレスを極限まで減らしつつ、社会的なつながりは失わないことが出来るのです。
また、社会資本を分散することはそれぞれのリスクの軽減にもなるのです。
リスクの分散は投資の基本ですよね。
それまでの人間関係をいきなり簡単に変えることは難しいかもしれませんし、至極ドライな思考のようにも感じますが、人間の「幸福」を資本の視点でみたとき、そのようにポートフォリオ化することが最もロジカルなのは、理解できました。
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長くなってしまったのでそろそろまとめますが、私は特に、この本の「好きをきわめて、フリーエージェント化する」という発想にとても共感を覚えました。
自分が今進もうとしている道でもあるので、それで間違ってないよと背中を押してくれているようでもありました。
また、人生における幸せの基本原則を述べてくれているので、しっかり実行できれば幸せになれるのだと思います。
でも誰もがそれを実行できるわけではないので、そこがこの本の読み手を選ぶところかなと感じました。
個人的には、今後の生き方を考えさせられる、非常にオススメの一冊でございます。
2017年に出版されているのでそもそも無理なのですが、もし私が20代のうちに出版されていてその時に読めていたら、ここまでの人生かなり変わっていただろうなと思います。
でも今出会えたのもきっとタイミングあったのことなので。
ここからが本当のスタートと思って、しっかりこの本からの学びを糧の一つとし私なりの人生を歩みたいと思います!
それでは。
幸福の「資本」論―――あなたの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」
- 作者: 橘玲
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2017/06/15
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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